AI を介さない無限生成装置 / 3トラック実働プロトタイプ
グラフ・図形を無限に吐き出す装置は難しくない。難しいのは、吐き出したものの大半を正しく捨てることだ。この計器は捨てる側を主役に据え、3本の独立した評価チャネル ── スペクトル・フラクタル次元・層コホモロジー ── で選別している。
enumerate → canonicalize → evaluate
「無限に作る」だけなら一段目で終わる。有限アルファベット上の文字列を辞書順に吐くだけで可算無限の規則が手に入る。問題はその先で、二段目がなければ同じものを別の名前で無限に見せられるし、三段目がなければ意味のないものを無限に見せられる。AI が担っているのは三段目の評価関数を人手で書かずに済ませることだけで、書く覚悟があれば装置から AI は消える。
決定論的 PRNG(mulberry32)を種番号で回して規則の遺伝子を復号する。A は成長オペレータの重みベクトル、B は書き換え規則と回転角、D は制限写像つきグラフ。
A は 1-WL 色細分化ハッシュ、B は規則正規形+64×64 占有格子署名、D は (dim H⁰, dim H¹, スペクトル) 署名。既出と一致したら捨てる。
Birkhoff の M = O/C(1933)を土台に、A は正規化ラプラシアンの λ₂、B は箱数え次元、D は大域切断の存在と障害の大きさ。すべて閉じた式で、学習も推論も使わない。
出力の単位は「対象」ではなく「規則」。だから採択1件が無限のアニメーションになる。A はグラフ成長の軌道、B はペンが走る軌道、D は最小二乗流の軌道として動いている。止めた瞬間の絵はその規則の一断面にすぎない。
H⁰ = 大域切断 / H¹ = 整合の障害
グラフの各頂点 v にストーク F(v) = ℝ²、各辺 e にも F(e) = ℝ² を置き、接続する組ごとに制限写像 F(v◁e): F(v) → F(e) を与えたものが胞体層。余境界作用素 (δx)_e = F(v◁e)x_v − F(u◁e)x_u の核が H⁰(大域的に整合する割当)、余核が H¹(整合の障害)になる。どちらも階数計算だけで求まる線形代数で、他の2チャネルとは完全に独立した軸を与える。
画面で動いているのは ‖δx − y‖² の最小二乗流。辺ごとの「測定値」 y を与えて頂点の割当 x を流すと、消せる不整合は消えていき、最後まで光り続ける辺が H¹ そのものになる。矢印が各頂点のストーク値、辺の太さと明るさが残差 ‖(δx − y)_e‖ を表している。
この可視化には元がある。制限写像を回転に限れば離散接続ラプラシアンで、H⁰ が非自明であることと全サイクルのホロノミーが自明であることが同値になる(Singer–Wu の vector diffusion maps がこの構造)。胞体層と層ラプラシアンの定式化は Hansen–Ghrist。新規なのは装置の中でこれを「評価チャネル」として使っている点だけで、数学そのものは既存。
なぜ却下率が本体なのか
| 対象 | 個数 | 備考 |
|---|---|---|
| 非同型グラフ(n = 10) | 12,005,168 | OEIS A000088。n = 12 で 1.65×1011 |
| 有限グラフ全体 | ℵ₀ | Rado グラフ1個が全有限グラフを誘導部分グラフとして含む |
| 可算無限グラフ(同型を除く) | 2ℵ₀ | |
| ℝ² のコンパクト集合(合同を除く) | 𝔠 |
探索空間は本質的に無限で(Rado グラフ、可算グラフ、ℝ² 上のコンパクト集合はいずれも古典的結果)、taxonomy が有限で閉じることはない。装置の同一性は評価器の設計にあるという主張はここから来ている ── 対象の側から装置は決まらない。
共通中間表現 = 型付きハイパーグラフ + DPO 書き換え + 層
3つとも「有限の生成元と関係による構造の提示」という同じ形をしている。属性付き型付きハイパーグラフを共通表現にとれば、グラフは自明に、L-system は道グラフ上の文字列書き換えとして、層はそのハイパーグラフの各セルへのベクトル空間割当として埋め込める。書き換えは DPO で統一でき、トラックごとに差し替わるのは三段目の評価器だけになる。規則を書き換える規則を入れれば、生成器自身が生成対象になる。
ただし統一表現そのものは既存のもの。DPO 書き換えは 1970 年代から実装(AGG / GrGen / GReAT)があり、回路のモノイド圏化は Baez–Fong の decorated cospan、ハイパーグラフ書き換えは Wolfram 物理プロジェクト、胞体層は Hansen–Ghrist。既存ツールを順に compose した prototype との差分を主張できるのは、アーキテクチャではなく 評価器スイートの設計と、その却下率が実際に何を残すかという実証部分だけになる。
硬い制約も 2 つある。ハイパーグラフの正準形計算はグラフ同型問題と同等(Babai 2016 で準多項式時間)で二段目が規模上限を決めること、そして Rice の定理により生成物の非自明な意味的性質は一般に決定不能で、評価器は必ず計算可能な代理指標に落とさざるを得ないこと。