最初に作った5枚。ピュロン主義の核を、それぞれ異なる物理で書き直したもの。スライダーで「論証の力」を動かすと、釣り合った瞬間に出力が零へ落ち、判断停止のタグが点く。
4本の抵抗が橋を組む。対立する2腕の比が等しくなると、橋を渡る検流計の電流はちょうど零になる。論証の比が釣り合うとき、判断という電流は流れない。
差動比較器は2入力の差を巨大に増幅する。一方が勝てば出力は振り切れ断定する。だが V₊ = V₋ のとき準安定に陥り、どちらにも倒れない。出力LEDは消灯:何も主張しない。
アダマール門 H は |0⟩ を |+⟩=(|0⟩+|1⟩)/√2 へ送る。真偽が等振幅で重なる状態 ── 量子版の等価値。独断論者は測定して一方へ崩落させる。ピュロンは測定を差し控え、重ね合わせのままに留める。
一つの粒子に、左右から論証の力が押し合う。二力が等しく逆向きなら合力は零。粒子は中心で静止する。動かされぬこと、それが平静の力学的な姿。
肯定の波と否定の波が同じ振幅で重なる。位相が揃えば強め合い一つの主張が轟く。逆位相(π)では完全に打ち消し合う。合成振幅は零、平らな節。沈黙こそ非断定の波形。
これらが「回路」と呼べるのは、どのドメインも effort × flow = 仕事率 という同じ共役対を持つから(Paynterのボンドグラフ, 1959)。電気の平衡条件と構造的に同型なので、「均衡→ヌル→安定」がそのまま移植できる。回路の数は閉じておらず、エネルギードメインの数だけ作れる。
| 回路 | 駆動力 effort | 流れ flow | 支配則 | 同型性 |
|---|---|---|---|---|
| 電気 | 電圧 V | 電流 I | V = IR | 真の同型 |
| 機械 | 力 F | 速度 v | F = Zv | 真の同型 |
| 流体 | 圧力差 ΔP | 流量 Q | ΔP = QR | 真の同型 |
| 音響 | 音圧 p | 体積速度 U | p = UZ | 真の同型 |
| 磁気 | 起磁力 F | 磁束 Φ | F = ΦRₘ | 不完全な類比 |
| 熱 | 温度差 ΔT | 熱流 Q | ΔT = QRₜₕ | 擬ボンドグラフ |
起磁力(mmf)が磁束を駆動し、磁気抵抗(reluctance)が抗う。電気ブリッジと同じ形:磁路の比が釣り合えば、橋を渡る磁束はゼロになる。
温度差が熱流を駆動し、熱抵抗が抗う。橋の両端の温度が釣り合えば、熱流はゼロ。論証の温度差が消えるとき、判断という熱は流れない。
圧力差が流量を駆動し、管路抵抗が抗う(ハーゲン・ポアズイユ)。橋の両側の圧力が釣り合えば、流量はゼロ。電気・機械・音響と並ぶ真の同型で、類比の崩れは無い。
2つの音源 ── 肯定の音と否定の音 ── が同じ強さで鳴る。逆位相になると、音圧は打ち消し合って節になる。能動騒音制御(ノイズキャンセル)の原理であり、波動回路の音響版。沈黙が等価値の音。
こちらは「効力–流れ」ではなく、結線されたネットワークという別の語義の「回路」。系統1のように物理量を平衡させて零にするのではない。この系統の中で、ピュロンに本当に効くのは論理回路ひとつ ── そこだけは装飾でなく、機構になる。
2入力 A と ¬A を受けるゲート。古典二値では、出力は必ず TRUE か FALSE のどちらかに割り当てねばならない ── 等価値の状態を表現する語彙が無い。だから論証が拮抗すると、古典ゲートは振動し、破れる。
ここで D-FUMT₈ / catuṣkoṭi が初めて機構として要る。第三・第四の値 BOTH / NEITHER が、等価値を正規の出力として名指す。ピュロンの判断停止は、古典論理では捉えられず、多値論理でだけ捉えられる。
── 系統2の他の「回路」は、結線ネットワークとして実在するが、「均衡→ヌル」の挙動を持たない。参照として並べる(インタラクティブではない)。
導波路と干渉計で光を結線。干渉による相殺は持つが、effort–flow の平衡器ではない。
ジョセフソン接合。量子ビットの物理基盤。位相が自由度で、別種の力学。
電子スピンを情報担体にする結線。電荷でなくスピン流を扱う。
ニューロンの結線網。自己言及・可塑性を持つ ── 縁起と SELF⟲ の議論が接続する先。
合成生物学。転写因子の結線で論理を組む。生きた論理ゲート。
分子素子による結線。最小スケールの計算基盤。