λ計算からその先へ ── 計算体系の記法カタログ
これらの体系は勝手に並んでいるわけではなく、圏論という共通の土俵の上で 「モノイダル圏 + 書き換え関係」 という一つの型に収まります。つまり本当の意味での和は、次の一行です。
あとは 𝒞 にどんな公理を足すか、という選択だけで各体系が出てきます。カリー・ハワード・ランベック対応の拡張版です。
| 体系 | 圏の構造 | 書き換え |
|---|---|---|
| λ計算 | デカルト閉圏(CCC) | β簡約 |
| SKIコンビネータ | CCC の変数なし表示 | 弱簡約 |
| 線形論理 | *-自律圏 | カット除去 |
| π計算 | 名前の圏 / 前層圏 | 通信簡約 |
| 相互作用ネット | 対称モノイダル圏 | 局所的グラフ書き換え |
| ZX計算 | ダガー・コンパクト閉圏 | スパイダー則 |
| ホモトピー型理論 | (∞,1)-トポス | 道の合成・transport |
| 微分λ計算 | 微分圏 | β + 微分簡約 |
| FRACTRAN | モノイド ℚ+ の ℕ への部分作用 | 分数の乗算 |
| 幾何代数 | クリフォード代数 Cl(V, q) | 幾何積 |
| 超現実数 | {L | R} 上の整礎再帰 | 単純化 |
記法そのものを一本の式に詰め込むと、こうなります。色は出典ごとに対応しています。
| 記号 | 出典 | 意味 |
|---|---|---|
| μX. / 𝐒𝐊𝐊 | λ計算・コンビネータ論理 | 不動点と、変数を使わない恒等関数 |
| ! ⊗ ⊸ | 線形論理 | 複製の許可・資源の並置・使い捨ての含意 |
| νa. ā⟨X⟩ ∥ a(y).P | π計算 | 新しいチャネルを作り、送信と受信を並行に走らせる |
| { L ∣ R } | 超現実数(Conway) | 左右の選択肢から数を生む定義 |
| ↑↑ | Knuth の矢印記法 | テトレーション(冪の反復) |
| ∧ | 幾何代数 | 外積 ── 面積を持つ量 |
| ⟦ − ⟧ZX | ZX計算・ストリング図 | 項を図式へ翻訳する解釈 |
| ≃refl | ホモトピー型理論 | 等式を「道」とみなす同値 |
| ∂ | 微分λ計算 | プログラムを微分する |
| [ − ] | Iverson 記法 | 命題を 0 / 1 に落とす括弧 |
| ⇓IN ∘ →F | 相互作用ネット・FRACTRAN | 評価機構と、それを駆動する分数列 |
この式の値 ── が 0 か 1 か ── を決める一般的な手続きは存在しません。左辺が正規形を持つかどうかは停止性問題そのものであり、しかも評価器として据えた FRACTRAN は、まさにコラッツ予想が住んでいる体系です。
記法をいくら足しても、決定不能性は 1 ミリも動かない。最初の問いにそのまま戻ってきます。