理科教育の漏斗

Science Education Funnel · 教育政策シミュレータ

理科教育の漏斗
1000人の中2生は、どこで失われるのか

日本の理科は学力が国際上位、意欲が国際下位という歪んだ形をしている。 中2で「理科が楽しい」のは40.1%、「理科を使う職業に就きたい」のは10.5%。 左の制御盤を動かすと、粒子の流れ・通過率・最終的な理系人材数がその場で変わる。 数字はすべてTIMSS 2023、PISA、文科省、査読論文の実測値に接続している。

Audio 45
01

制御盤とシミュレーション

8つのレバーは、いずれも実測データか査読論文の効果量に対応している。初期値は「日本の現状」。 スライダーでも、右の数値入力でも操作できる。

制御盤 8 levers

プリセット

通過中 最終段 到達 離脱
母集団 1000人 / 中学2年

読み取り値 live

動機に支えられた理系進学
38人 / 1000
日本の現状 = 38人
理科の学力(TIMSS換算)
557点
国際尺度平均 500 / シンガポール 606
「理科が楽しい」
40.1%
国際平均 51.7%
「理科を使う職業に就きたい」
10.5%
国際平均 20.1%
理工農系 進学率(全体)
22.0%
うち動機なし経路 182人
女子の理系進学率
5.0%
OECD最下位クラス(2021年 27%)
下位層の学力損失
14点
小さいほど格差が狭い
02

実測との対照

白い縦線は日本の実測値。バーはシミュレーションの現在値。レバーを動かすと、実測からどれだけ離れたかが見える。

│ 白い縦線 = 日本の実測値 / 塗り = シミュレーションの現在値

03

モデルの中身

この漏斗が何を計算しているか

探究学習は曲線で効く。PISA 2015の6か国分析で、探究活動の頻度は理科の成績と負(最高頻度で −15〜−26点)だが、 興味・自己効力感・理科系進路期待とは正(0.2〜0.3)。つまり点数を下げて興味を上げる。モデルでは 30q − 52q² という上に凸の曲線で学力に効き、興味には線形で効く。最適点は q ≈ 0.29 付近。

アクティブラーニングには閾値がある。Freeman et al. 2014 の d=0.46 は2025年の再メタ分析でも g=0.519 で再現されたが、 授業時間の1/3未満の導入では有意差が出ない(start-small conundrum)。モデルでも 33% を超えるまで効果はゼロのまま。

実装の忠実度が全体を支配する。EEFとIESの大規模RCT 141試行(122万人)の平均効果量は 0.06SD、中央値ベイズ因子0.56。研究室で頑健な原理が教室で縮む。このレバーを下げると、 他のレバーをいくら上げても数字が動かなくなる——それがこのモデルでいちばん重要な挙動。

AI設計は符号が反転する。PNAS 2025(トルコ、高校生約1,000名のRCT)では、素のGPT-4は演習中の成績を +48% 上げたが AIなしの試験では −17%。答えを直接出さないチューター型UIでは低下が消えた。 実地の大規模検証(Khanmigo、テネシー州18校2年)は年 0.04〜0.05SD にとどまる。左端が「素のAI」、右端が「ガードレール付き」。

動機なし経路は意図的に残してある。中2で理科職を志向するのは10.5%なのに、大学で理工農系に進むのは22%。 つまり理系進学者の多くは、中学時点で理科が好きでも理科の職に就きたくもない。 この経路は主に学力と履修機会に反応し、意欲レバーにはあまり反応しない。興味と到達度は別の量である、というモデル上の表明。

注意:各段の通過率は前段の生存者に対する条件付き確率で、実測の周辺分布をそのまま入れ子にしたものではない。 個々の係数はデータに接続しているが、係数どうしの結合はモデル作成者の仮定。政策の予測ではなく、 エビデンスどうしの緊張関係を体感するための装置として読んでほしい。

04

試験問題

全12問。すべて上のモデルが依拠している実測データから出題している。選ぶと即座に採点され、解説と出典が開く。

正解 0 / 0 解答済(全12問)
05

出典