AI を介さない無限生成装置 / 4トラック実働プロトタイプ
グラフ・図形・回路を無限に吐き出す装置は難しくない。難しいのは、吐き出したものの大半を正しく捨てることだ。この計器は捨てる側を主役に据え、4本の独立した評価チャネル ── スペクトル・フラクタル次元・多値力学・層コホモロジー ── で選別している。
enumerate → canonicalize → evaluate
「無限に作る」だけなら一段目で終わる。有限アルファベット上の文字列を辞書順に吐くだけで可算無限の規則が手に入る。問題はその先で、二段目がなければ同じものを別の名前で無限に見せられるし、三段目がなければ意味のないものを無限に見せられる。AI が担っているのは三段目の評価関数を人手で書かずに済ませることだけで、書く覚悟があれば装置から AI は消える。
決定論的 PRNG(mulberry32)を種番号で回して規則の遺伝子を復号する。A は成長オペレータの重みベクトル、B は書き換え規則と回転角、C は 8 値ゲート網、D は制限写像つきグラフ。
A は 1-WL 色細分化ハッシュ、B は規則正規形+64×64 占有格子署名、C は軌道の吸引子署名+構造ハッシュ、D は (dim H⁰, dim H¹, スペクトル) 署名。既出と一致したら捨てる。
Birkhoff の M = O/C(1933)を土台に、A は正規化ラプラシアンの λ₂、B は箱数え次元、C は Derrida 感度と到達値集合、D は大域切断の存在と障害の大きさ。すべて閉じた式で、学習も推論も使わない。
出力の単位は「対象」ではなく「規則」。だから採択1件が無限のアニメーションになる。A はグラフ成長の軌道、B はペンが走る軌道、C は 8 値状態遷移の軌道、D は最小二乗流の軌道として動いている。止めた瞬間の絵はその規則の一断面にすぎない。
H⁰ = 大域切断 / H¹ = 整合の障害
グラフの各頂点 v にストーク F(v) = ℝ²、各辺 e にも F(e) = ℝ² を置き、接続する組ごとに制限写像 F(v◁e): F(v) → F(e) を与えたものが胞体層。余境界作用素 (δx)_e = F(v◁e)x_v − F(u◁e)x_u の核が H⁰(大域的に整合する割当)、余核が H¹(整合の障害)になる。どちらも階数計算だけで求まる線形代数で、他の3チャネルとは完全に独立した軸を与える。
画面で動いているのは ‖δx − y‖² の最小二乗流。辺ごとの「測定値」 y を与えて頂点の割当 x を流すと、消せる不整合は消えていき、最後まで光り続ける辺が H¹ そのものになる。矢印が各頂点のストーク値、辺の太さと明るさが残差 ‖(δx − y)_e‖ を表している。
この可視化には元がある。制限写像を回転に限れば離散接続ラプラシアンで、H⁰ が非自明であることと全サイクルのホロノミーが自明であることが同値になる(Singer–Wu の vector diffusion maps がこの構造)。胞体層と層ラプラシアンの定式化は Hansen–Ghrist。新規なのは装置の中でこれを「評価チャネル」として使っている点だけで、数学そのものは既存。
⟨∧, ∨, ¬⟩ で生成される部分クローンの上の同期ネットワーク
3値以上の論理ではクローンが連続体個あり分類定理が存在しない(Janov–Muchnik 1959)。だから 8 値回路の「種類」は taxonomy から演繹できず、どの部分クローンを使うかを選ぶしかない。この装置は D-FUMT₈ の ∧ / ∨ / ¬ が生成するクローンに固定し、各ノードをその合成 8 種のいずれかに割り当てている。状態空間は 8n、全列挙は不可能なので軌道からサイクルを検出する。
D-FUMT₈ には実装の異なる 2 つの代数がある。seven-logic.ts(MCP の d8_table が返す表)と dfumt8_alu.v の Dfumt8InfoHybrid(silicon 一次、Paper 145 が依拠)で、両者は — entry 中 — で食い違う。片方をもう片方に合わせるのではなく別名で併存させる ── これが Route C の決定(STEP 1773)で、上の制御で切り替えられるのはその 2 つである。
| 代数法則 | seven-logic.ts | Dfumt8InfoHybrid | 全体 |
|---|
| 構造 | seven-logic.ts | Dfumt8InfoHybrid |
|---|
この 2 つの表はページ読み込み時に真理値表そのものを走査した結果で、書き写した数字ではない。役割の入れ替わりが読み取れる ── seven-logic では ⊤ が ∧ の単位元・〇 が両側吸収元だが、Verilog 側では ∞ が ∧ の単位元、N が ∧ の吸収元、B が ∨ の吸収元で、〇 は吸収元ですらない。結合律は Verilog で完全に成立し、代わりに De Morgan と分配律が大きく破れる。どちらが正しいという話ではなく、別の演算である。
静的な代数構造から力学を予測して、方向ごと外した
この装置で 2 代数を回す前に、事前登録された仮説があった ── 「Verilog 側は極大部分束が 2 個の直和で結合律も完全成立だから、higher tier {∞, 〇, ~, ⟲} がそれ自体で束をなし、内部で周期が立つはずだ」。seven-logic では higher 値が終端になり周期は古典コア {⊤, ⊥} にしか宿らない、という観察の対比として立てた予測だった。
STEP 1859 の検定で、これは符号ごと反証された。5 seed すべてで判定は NEITHER。
| 指標 | seven-logic | Verilog | 予測との関係 |
|---|---|---|---|
| m1 古典値のみ到達率 | 0.086 | 0.370 | 逆方向 4.3×(p = 2e-4) |
| m3 higher-tier 周期率 | 0.887 | 0.079 | 逆方向 11.2×(p < 0.01) |
| m2 固定点却下率 | 0.289 | 0.234 | 予測方向(ただし生存バイアス由来) |
誤りの根源は特定できている。予測は法則表(部分束・結合律)から立てたが、力学を支配していたのは cross-tier rule だった。Verilog の「tier をまたぐと古典値が勝つ」規則が higher 値を追い出し、seven-logic の higher 値は mid-precedence にあって AND-min に保存され周期に残る。結合律や De Morgan の成否は、振る舞いの予測子として役に立たなかった。
Route C 下での実務的な含意。2 代数を併存させるとき、documentation で区別すべき軸は法則表ではなく cross-tier rule である。「seven-logic は結合律が破れる/Verilog は De Morgan が破れる」ではなく「seven-logic は higher 値を保存する/Verilog は古典値へ追い出す」と書いた方が、使う側の判断に効く。
なお STEP 1865 の survival bias 精査は MIXED で、higher-tier 吸引子は pure_higher 初期状態から保存されるのではなく mixed 状態の反復過程で生成されることが分かった ── 反証した側もしなかった側も予測していなかった第 3 の機構である。
なぜ却下率が本体なのか
| 対象 | 個数 | 備考 |
|---|---|---|
| 非同型グラフ(n = 10) | 12,005,168 | OEIS A000088。n = 12 で 1.65×1011 |
| 有限グラフ全体 | ℵ₀ | Rado グラフ1個が全有限グラフを誘導部分グラフとして含む |
| 可算無限グラフ(同型を除く) | 2ℵ₀ | |
| ℝ² のコンパクト集合(合同を除く) | 𝔠 | |
| 4入力ブール関数 | 65,536 | 6入力で 1.8×1019 |
| 8値の2項演算 | 864 ≈ 6.3×1057 | この装置はそのうち ⟨∧,∨,¬⟩ の 8 合成しか使わない |
| 2値論理のクローン | ℵ₀ | Post の束(1941)で完全分類済み |
| 3値以上の論理のクローン | 2ℵ₀ | Janov–Muchnik 1959 ── 分類定理は原理的に存在しない |
最後の 2 行の落差が Track C の設計理由。分類が不可能である以上、評価器は taxonomy から導出できず選択するしかない。装置の同一性は評価器にあるという主張はここから来ている。
共通中間表現 = 型付きハイパーグラフ + DPO 書き換え + 層
4つとも「有限の生成元と関係による構造の提示」という同じ形をしている。属性付き型付きハイパーグラフを共通表現にとれば、グラフは自明に、L-system は道グラフ上の文字列書き換えとして、8値回路は型付きポートを持つハイパーグラフとして、層はそのハイパーグラフの各セルへのベクトル空間割当として埋め込める。書き換えは DPO で統一でき、トラックごとに差し替わるのは三段目の評価器だけになる。規則を書き換える規則を入れれば、生成器自身が生成対象になる。
ただし統一表現そのものは既存のもの。DPO 書き換えは 1970 年代から実装(AGG / GrGen / GReAT)があり、回路のモノイド圏化は Baez–Fong の decorated cospan、ハイパーグラフ書き換えは Wolfram 物理プロジェクト、胞体層は Hansen–Ghrist。既存ツールを順に compose した prototype との差分を主張できるのは、アーキテクチャではなく 評価器スイートの設計と、その却下率が実際に何を残すかという実証部分だけになる。
硬い制約も 2 つある。ハイパーグラフの正準形計算はグラフ同型問題と同等(Babai 2016 で準多項式時間)で二段目が規模上限を決めること、そして Rice の定理により生成物の非自明な意味的性質は一般に決定不能で、評価器は必ず計算可能な代理指標に落とさざるを得ないこと。